伊勢信仰を広めた存在として、伊勢御師という人たちがいました。各地をまわり、伊勢信仰を伝えたり伊勢神宮への参拝を勧めたりして檀家を増やしました。尾張地域の檀家への訪問も定期的に行っており、その際使用されたのが『尾州名古屋檀家帳』です。現代のグーグルマップのような緻密な名古屋の地図が庶民層に広く普及していたかどうかもわからない江戸の時代にどうやって檀家の家に辿り着いたのでしょうか。

このツアーでは『尾州名古屋檀家帳』と古地図を使い、高岳院周辺と主税町・橦木町周辺の当時の檀家の居場所を探しましょう。『尾州名古屋檀家帳』は、沢瀉大夫という伊勢御師が作成した檀家帳です。この檀家リストには沢瀉家が尾張名古屋地域の檀家への訪問時に役立つノウハウなどが書き込まれています。区画の変化やランドマークの消失など、時代の流れの中で変化はしていますが、史料を丁寧に読み解くことで、当時の名古屋の風景が浮かび上がり、当時御師が通ったであろう道と場所をある程度突き止めることができるんです。歴史史料は専門家だけでなく、コツさえつかめば誰にでも活用できるものですので、ぜひみなさんもその魅力を知って、その時代を生きた人々の営みを感じてみませんか。教科書の中にしかなかった歴史が、ぐっと身近なものになるはずですよ。